メディカルトピックス
MEDICAL TOPICS
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No.13 がんワクチンによる再発予防・発症抑制に期待
個別化がん免疫療法の展望
(Oncology Tribune 2020-03-10 より抜粋)
https://oncology.jp/posts/17032?
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は画期的な薬剤だが、その奏効率は2割程度、残された8割の患者に対する新たながん免疫療法の開発が求められており、腫瘍を攻撃するT細胞をどのように誘導するかが鍵となる。第17回日本免疫治療学会(2月22日)において、同学会理事長で国立がん研究センター先端医療開発センター免疫療法開発分野分野長の中面哲也氏は、共通がん抗原や腫瘍特異的変異抗原(ネオアンチゲン)を標的とした個別化がん免疫療法の展望について解説した。
新規の共通がん抗原を標的とした免疫療法の開発が進む
がんペプチドワクチン療法は抗原に由来するペプチドの投与により細胞傷害性T細胞(CTL)を活性化する免疫療法の1つであり、抗原には共通がん抗原とネオアンチゲンがある。
肝細胞がんで特異的に発現する共通抗原としてグリピカン3(GPC3)を特定。CTLを誘導するGPC3由来ペプチドワクチンの投与により、進行肝細胞がんや卵巣明細胞腺がんにおいて、頻度は高くないものの部分奏効(PR)が得られた症例を経験しているという。再発抑制については、外科的治療後にGPC3陽性でワクチンを投与した群では、外科的治療のみの対照群と比べて1年再発率が有意に低かった。(①)。GPC3陽性肝細胞がんは術後ワクチンを投与した群で著明な予後の改善が示された。小児の難治性GPC3陽性の肝芽腫で、ワクチン投与のみで再発は見られず、その後未治療で全例が5〜7年、無再発生存中である(②)。(中略)
完全個別化がん免疫療法により全てのがん患者で効果が得られるか
ネオアンチゲンを標的とする腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の養子細胞移植とペムブロリズマブ投与により、進行性乳がん患者において完全寛解(CR)が得られたとの報告(③)を紹介。「免疫療法の効果が乏しいと考えられていた乳がんにおいてこのような結果が得られたことは、完全個別化のがん免疫療法により全てのがん患者で効果が得られる可能性を示している」と述べた。同センターでは、がんの遺伝子変異の測定とネオアンチゲンの予測・選定により、完全個別化されたネオアンチゲン由来のペプチドワクチンを合成し、臨床試験の実施を目指しているという。
最後に同氏は「2人に1人ががんに罹患する時代を迎え、がんの発症を抑制するには血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells;CTC)および血中循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA;ctDNA)を用いたがん発症リスクの早期診断や、共通がん抗原およびネオアンチゲンによる個別化ワクチンの創成に期待が寄せられている」と述べ、「難治性腫瘍に対しては共通がん抗原を用いたTCR-T療法やCAR-T療法、あるいは個別化T細胞療法をICIと組み合わせることで根治を目指したい」と展望した。
①Oncoimmunology 2016; 5: e1129483②Oncoimmunology 2017; 7: e1377872
このように、高度な技術が科学技術の発展により、一人ひとりのがん遺伝子を調べることで、免疫細胞治療にさらなる進化につながっています。細胞を作ることは、とても困難ですが、すでに自身が持っている免疫細胞を使って、精密かつ個別の治療ができるようになりました。その効果に期待したいと思います。今、何ができるのか? 是非ご相談ください。
2020年3月15日 福岡メディカルクリニック 内藤恵子