福岡メディカルクリニック

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がん免疫サイクル

The Cancer-Immune Cycle and Cancer Immune Escape

がん免疫サイクルとがん免疫逃避

免疫の力によってがん細胞を死滅させるためには、7つのステップからなる「がん免疫サイクル」という概念の理解が必要となります(図 がん免疫サイクルと免疫逃避機構)。

がん免疫サイクル
  • 死んだがん細胞からがんの目印(がん抗原)が放出されます
  • 樹状細胞が放出されたがんの目印を取込み、目印を覚えこみます
  • 樹状細胞はがんの目印を攻撃役のT細胞に伝達し、さらに活性化させます
  • 活性化したT細胞は血流に乗ってがん組織に向かいます
  • がん組織に届いたT細胞が、がん組織内に侵入(浸潤)します
  • T細胞ががん細胞を認識し結合します
  • T細胞ががん細胞を攻撃し、その結果がんの目印がさらに放出され①につながります

この「がん免疫サイクル」が体内で正常に回っているときは、免疫によるがんの監視機構がうまく働いており、体内で発生したがんを抑えることが出来ると考えられています。ただし、がんにはこの免疫による監視から様々な手段で逃れる「免疫逃避」という現象が知られています(上図A~E 青字)。免疫からの逃避に成功したがん細胞は増殖し、がんの発症やがんの増大につながると考えられています。

複合的がん免疫療法

そこで、このサイクルをうまく回して、がん細胞を免疫の監視下に置くためには、巧みな戦略が必要となります。近年注目される免疫チェックポイント阻害剤は、がん細胞が免疫細胞の働きを抑制する働きを解除することを狙った治療法です(ブレーキを解除すると例えられます)。一方、免疫細胞治療は、このサイクルの主役である免疫細胞の働きを高めて、サイクルを上手く回ることを狙った治療法となります(アクセルを踏むと例えられます)。ここで重要なことは、どこか一カ所のブレーキを解除するまたは一カ所のアクセルを踏むのではなく、サイクル全体を見据えて様々なアプローチで足りない部分を補ってあげることで免疫サイクルをうまく回すことであり、この「複合的がん免疫療法」という概念はがん免疫の戦略において近年注目されています。

リンパ球数が少ない患者さんは多い患者さんよりも免疫チェックポイント阻害剤の治療効果が乏しいとの報告があります(Oncotarget,2017,vol.8)。これは、がん攻撃の主役となるT細胞が少ないためにサイクルのアクセルを踏み込めていない患者さんは、上図Eのブレーキ部分を解除しただけでは意味がないことを示しています。さらに、抗がん剤治療や放射線治療においても、免疫サイクルの様々な部分にかかわっているという報告もあり、免疫療法と既存の標準治療との併用の重要性が今後高まってくると考えられます。

アルファ・ベータT細胞細胞療法には、上図Eのブレーキ解除の働きがあることも報告されています。