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No.15  がん診断の1年前に感染症リスク最大に

No.15  がん診断の1年前に感染症リスク最大に
(Oncology Tribune 2020年5月1日 論文紹介より抜粋)
https://medical-tribune.co.jp/news/2020/0430530086/

国内の7年間のレセプトデータベースを使用した症例対照研究で、がんと診断される数年前から感染症リスクが高くなる可能性が示された。京都大学の井内田科子氏らがCancer Immunol Res、8 (5):579-579(2020年4月17日オンライン版)で発表した。新規にがんと診断された30歳以上の患者では、対照群に比べてがん診断の1年前にインフルエンザ、胃腸炎、肝炎または肺炎の罹患率が最も高くなったという。この知見はがんの早期発見・予防に役立つ可能性があるとして、前がん状態での臨床的炎症、感染および免疫の関係を研究する必要性を指摘している。
免疫抑制の代替評価として感染率を検討
これまでの報告から、リンパ腫、慢性リンパ性白血病、骨髄腫などの非固形がん発症前には感染症が増加することが示唆されている。しかし、固形がん発症前の感染症に関する研究は少ない。井内田氏は「がんは、感染症、免疫不全、発がん性化学物質への曝露または慢性/遺伝的状態による炎症環境下で発症しうる。前がん状態での免疫抑制が、感染率の上昇として現れる可能性がある」と指摘。
7年間分のデータを用いた症例対照研究で、前がん状態での免疫抑制の代替評価として新規がん患者群と対照群の感染症有病率を比較(中略)。(2004~05年)から7年目(2010~11年)に新規にがんと診断された30歳以上の患者群(2,354例;男性1,843例、女性511例)で1~6年目の主要な4種類の感染症(インフルエンザ、胃腸炎、肝炎または肺炎)の有病率を比較。(中略)
がんの部位は、消化器(胃を除く)25%、頭頸部17%、胃15%、呼吸器・胸部12%、生殖細胞12%、泌尿器8%、肝臓4%、乳房(女性)3%、血液/骨/骨髄2%、内分泌1%などだった。がん診断前6年間における4種の感染症の年間有病率は、対照群に比べ患者群で高く、両群の年間有病率の差はがん診断1年前(6年目)に最大になった。同年の患者群での感染症有病率は、対照群に比べてインフルエンザで17.6%、胃腸炎で46.1%、肝炎で223.4%、肺炎で135.9%高かった。(中略)
診断前年の罹患リスクは55%上昇
対照に比べて1年目は16%(OR 1.16、95%CI 1.04~1.29)上昇、2~5年目は30%前後の上昇で推移し、6年目に55%(同1.55、1.40~1.70)上昇した。全がん患者の肝炎リスクは6年目に最大となり、対照群の3倍以上になった(同3.38、2.12~5.37)。(中略)
前がん状態の評価に役立つ可能性も
井内田氏らは「全がんにおいて診断の6~7年前から、インフルエンザ、胃腸炎、肝炎および肺炎の罹患率が高くなることが示された。感染部位は同じ臓器のがんリスクと必ずしも相関しないことも分かった。この4種の感染症の年次評価が、成人の前がん状態の調査に役立つ可能性がある。対照群の感染症罹患率には変化がないことから、がんを発症した患者の感染症罹患率上昇は免疫抑制によることが示唆される」と述べた。(以下省略)

今回の報告は臨床の中で見逃されている貴重な検証と思われる。環境要因、遺伝要因を加味していないため、一概に言えないとコメントされているが、瀬田クリニックグループでも、がん患者さんにおけるリンパ球機能を中心とした細胞性免疫の機能低下を報告している。(International Immunophamacology 18(1):90-97,2014)。
感染症が免疫機能低下の結果、引きおこされる可能性は通説であり、また、感染症の結果、種々の免疫機能低下をきたすことも考えられる。

今回の報告で、癌の発育は急激ではなく、がん発症時はすでに免疫機能低下(不全)状態である事を認識し、これらを修復し、活性化リンパ球治療で正常に近い状態を維持させて同時にがん治療を行っていく事は非常に有用と考えます。また、免疫機能検査を先制医療としてのがん検査の一項目とする事の有用性も出てくると考えます。

2020年5月17日  福岡メディカルクリニック 内藤 恵子

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