メディカルトピックス
MEDICAL TOPICS
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肉なしの食事でがんリスクが低下??
提供元:HealthDay News 公開日:2022/03/29
https://www.carenet.com/news/general/hdn/53970
肉を全く食べないか、食べる量が少な目の人では、大腸がんのリスクが低い可能性のあることが、英オックスフォード大学のCody Watling氏らによる大規模研究から明らかになった。(中略) この大規模研究の結果は、肉を食べないか少量の摂取にとどめる食事が、がんリスクの低下に関連するという論拠を補強するものだといえる。研究の詳細は、「BMC Medicine」2月24日号に発表された。
本研究では、英国の大規模バイオバンク研究であるUKバイオバンクの参加者47万2,377人を対象に、肉の摂取量とがん発症との関連を前向きに検討した。対象者は、質問票を用いて調べた肉の摂取量に基づき、定期的に肉を摂取する人(赤肉、加工肉、家禽類の摂取が週に5回超、24万7,571人)、摂取量が少な目の人(赤肉、加工肉、家禽類の摂取が週に5回以下、20万5,385人)、肉の代わりに魚を摂取する「ペスカタリアン」(1万696人)、動物性食品をいっさい摂取しないヴィーガンも含めた「ベジタリアン」(8,685人)の4群に分類された。
その結果、定期的に肉を摂取している人に比べて、肉の摂取量が少な目の人やペスカタリアン、ベジタリアンでは、全てのがん種の発症リスクが低いことが明らかになった。また、食事とがんリスクの関係は、がんの種類によって異なることも判明した。例えば、大腸がんに関しては、先行研究で肉の摂取量の少なさがリスク低下に関連することが示されていたが、今回の研究でも、肉の摂取量が少な目の人では、定期的に肉を摂取する人と比べて大腸がんリスクが9%低いという結果が得られた。
乳がんと前立腺がんに対する食事の影響に関しては、これまで大腸がんほど明確なことは分かっていなかった。今回の研究では、閉経後女性に限定されるものの、ベジタリアン食やヴィーガン食が乳がんに対して保護的に働く可能性のあることが示された。(中略)しかし、より詳細な解析から、これらの女性での乳がんリスク低下の大部分は、BMIの低さに起因していることが分かった。(中略)一方、前立腺がんに関しては、ベジタリアン、またはペスカタリアンの男性では、定期的に肉を摂取する男性と比べて、それぞれ20%と31%のリスク低下が認められた。(中略)
一方で、専門家の間では、野菜、果物、マメ類、食物繊維の豊富な全粒穀物が、さまざまな種類のがんのリスク低下に関連している点については、コンセンサスが得られている。そのためStefanski氏は、「大切なのは、どの食品を除外するかではなく、どの食品を取り入れるかだ」と強調。また、「肉の摂取は控え目にしておくのが賢明だ」とアドバイスしている。
原著論文はこちら Watling CZ, et al. BMC Med. 2022;20:73.
クリニックでは、がん治療している方々からの食事に関する質問が非常に多く、またその見解については、賛否両論あります。2015年の国立がん研究センターの報告では、肉食80g、毎日食する人での大腸がん罹患率データが示されました。参考;赤肉・加工肉のがんリスクについて|国立がん研究センター (ncc.go.jp)
このようなデータはあくまでも傾向を見たもので、他のファクターが厳密に排除された状態のものではないということ。例えば、赤身肉に含まれるL-カルシトニンは抗がん剤治療中の疲労回復によいという報告もあります。結論として、偏らず、取りすぎず、バランスよく食事をとるということだと考えます。
2022年4月3日 福岡メディカルクリニック 内藤恵子