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No.54 日本発次世代がん治療「ホウ素中性子捕捉療法」関西BNCT共同医療センター

No.54 日本発次世代がん治療「ホウ素中性子捕捉療法」関西BNCT共同医療センター

日本発次世代がん治療「ホウ素中性子捕捉療法」 関西BNCT共同医療センター|広報誌「YOU’S[ユーズ]」|発行冊子・動画|企業情報|関西電力  (2023.3.15より転載)

医療の世界は日進月歩。治療が困難とされる悪性脳腫瘍にも有効な治療法が見えてきた。「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」だ。治療、研究拠点である関西BNCT共同医療センターを訪ね、宮武伸一特務教授に話を聞いた。

ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)とは?

がん細胞に集まる特性を持つホウ素化合物を投与し、体外から中性子線を照射してがん細胞を破壊する。BNCTではエネルギーの小さい中性子線を照射するので、正常細胞への影響はほとんどないが、ホウ素とぶつかると核反応を起こし、粒子線が発生する。粒子線は、がん細胞内部で高いエネルギーを発生させるため、がん細胞が死滅するという仕組み。通常の放射線治療より正常細胞に与えるダメージが小さく、放射線治療後に再発したがんの治療にも使えるのが大きなメリットだ。また、通常の放射線治療では複数回来院が必要だが、BNCTは、1〜2回の来院で、照射時間は30分~1時間ほどで完了。治療期間が短く患者さんへの負担も少ない。

これまでの経緯は?

BNCTの研究は1950年代にアメリカで始まったが、使用していたホウ素化合物や中性子線の品質が悪く、結果は惨憺たるものだった。また、ホウ素化合物ががん細胞にきちんと入っているかを評価する方法がなく、研究は頓挫していた。
それを打破したのが、日本でのPET(陽電子放出断層撮影)という医療用画像診断技術の進展だ。がん細胞だけに取り込まれるホウ素化合物の開発によって的確な診断が可能になり、同じホウ素薬剤で治療もできるようになった。さらに病院内に設置できる小型軽量で安全な加速器が開発され、中性子を安定的に照射できるようになったことで、BNCTによるがん治療が大きく前進。2020年6月から切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がんを対象にBNCTの保険診療が始まった。
BNCT実用化には、医師だけでなく、ホウ素薬剤を開発する化学者、加速器開発を行う工学者など多くの研究者が携わっている。関西圏は早くから研究交流、共同開発を行っており、BNCT治療確立に大きく貢献している。

加速器開発はどのように行った?

当初は京都大学の原子炉を使って臨床研究をしていたが、原子炉は医療機器として認められず、実用化には至らない。そこで加速器開発を行うことになった。住友重機械工業と研究を開始し、08年世界初となるBNCT用加速器の開発に成功した。

今後の展望は?

BNCTはもともと脳腫瘍の臨床研究から始まっており、脳腫瘍の治療に使えるよう研究を進めている。現在、再発した悪性脳腫瘍の1つである神経膠腫に対して、開発企業※1による企業主導治験が終了、承認申請に向けた準備が進んでいる。悪性神経膠腫は、手術や放射線治療後に再発する可能性が高いが、再発した悪性神経膠腫に対する標準治療はまだ確立されていない。今まで治療を諦めざるを得なかった患者さんにも効果的な治療法を示せるよう研究を進め、BNCT治療の可能性を広げていきたい。

※1 大阪医科薬科大学におけるBNCTの開発企業は、加速器BNCT/「住友重機械工業」、ホウ素薬剤/「ステラファーマ」

*宮武伸一医師/大阪医科薬科大学、関西BNCT共同医療センター 特務教授。京都大学医学部卒。2014年から大阪医科大学医学部附属病院がんセンターで悪性脳腫瘍に対するBNCT治験を責任医師として主導。2020年より現職。

(参考)ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の取組み(大阪府HP)

https://www.pref.osaka.lg.jp/jigyochosei/bnct-jituyouka/index.html

以上、最近、受診者からの質問が相次いだBNCTについて比較的解りやすく書かれた記事を掲載させていただきました。治療の詳細については大阪府のHPや大阪医科薬科大学、関西BNCT共同医療センターHPが参考になります。基本的に放射線治療のひとつであり局所療法となります。一般的には照射範囲は15㎝以内、皮膚表面より7cmの深さが条件となるようです。放射線療法は「切らない」という大きなメリットがありますが、再治療や病変部位などに条件があります。一般的に、全身療法である免疫細胞療法と合わせると相乗効果が認められること、局所の病勢を押さえるには良い選択肢と思われます。

2023年5月28日   福岡メディカルクリニック   内藤 恵子

 

 

 

 

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