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No.68 アスピリンが大腸がんリスクを軽減する仕組み

No.68 アスピリンが大腸がんリスクを軽減する仕組み

How Aspirin May Lower Risk for Colorectal Cancer
Helen Leask / Medscape 2024/7/11 より転載
https://www.carenet.com/medscape/oncology/001118.html

アスピリンを常用している人は大腸がん(CRC)のリスクが低く、発症したとしても死亡する可能性が低いことを示すエビデンスが増えている。たとえば、2020年のメタ解析では、1日325mg(1錠の標準用量)のアスピリンを服用すると、CRCの発症リスクが35%低下することが明らかになった。頻繁に引用されている2010年のThe Lancetの研究では、低用量アスピリンを毎日服用すると、20年間で結腸がんの発症率が24%低下し、結腸がんによる死亡率は35%低下することが明らかになっている。(中略)

ところで、アスピリンは具体的にどのような働きをしているのだろうか。アスピリンがシクロオキシゲナーゼ(COX)酵素、具体的には、COX-1とCOX-2を阻害すること、そして、COX-2経路がCRCの発症と進行に関係していることは明らかだ、とパドバ大学(イタリア、パドバ)の外科医であるMarco Scarpa氏は説明した。「しかし、私たちが新たに発見したのは、アスピリンが免疫監視を強化する直接的な役割を果たしている可能性があることだ」とScarpa氏はMedscape
Medical Newsに語った。(中略)Scarpa氏は、イタリア全土の研究者数十人が協力して、直腸がんの免疫監視に関する研究を行っている IMMUNOREACT試験グループのリーダーを務めている(中略)研究者らは、アスピリンの常用は大腸がんの診断時の病期には影響を与えないようだったが、腫瘍グレードは全体的に有意に低く、特にBRAF変異のある患者ではそれが顕著であったことを突き止めた。アスピリン常用者は結節転移やリンパ節転移を有する可能性も低く、この効果は遠位(左側)結腸がん患者よりも近位(右側)結腸がん患者において、より顕著であった。

最も注目すべきことは、IMMUNOREACT 7で、アスピリンがCRCの免疫微小環境に有益な効果をもたらすことが明らかになったことだ。
研究チームは、アスピリンが消化管上皮腫瘍細胞上の抗原提示を直接的に高め、それにより、体の免疫反応を誘導してがんと闘わせることを突き止めた。
マクロレベルで見ると、研究に参加したアスピリン使用者は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)のレベルが高い傾向があった。Scarpa氏の研究チームは過去に、CD8+およびCD3+ TILのレベルが高いことが、直腸がんにおける術前補助療法の成功予測因子であることを示している。

細胞傷害性CD8+ T細胞は抗がん免疫反応の核である。最新の研究により、アスピリン使用者はCD8+/CD3+ T細胞の比率が高い場合が多く、がんを殺すCD8+細胞の存在感がより強いことが示唆されている。(中略)がん細胞はT細胞による検出を避けるためにCD80の発現を低下させることができるが、この研究は、アスピリンが腫瘍細胞の表面におけるCD80の発現を高めることによって、この戦略を阻止する役割を果たしているようだ、ということを示唆している。(中略)全体として、これらの新しいデータは、アスピリンが免疫系の活性化を助けることを示唆しており、CRCにおける潜在的な化学予防効果を説明する一助となっている。(略)
Scarpa and Davies had no conflicts of interest to declare.
Medscape Medical News © 2024 WebMD, LLC
Cite this: How Aspirin May Lower Risk for Colorectal Cancer – Medscape – July 11, 2024.

以上です。記事が長く、専門的なのでかなり省略いたしましたので説明不足かもしれません。アスピリンによる大腸がん化学予防というのは以前より提唱されており、多くの方が実践されています。今回、具体的にその予防効果を検証したと言う事です。大腸がん罹患者は世界中で増加していますが、アスピリンを低用量飲んでいる場合はがん局所でリンパ球を中心とした免疫細胞が活躍して進行を抑えていると言う事です。まだ、全容が判ったわけではないですが再発予防にも有用と考えます。治療中の方は主治医にご確認戴いては如何でしょうか?

2024年10月1日    福岡メディカルクリニック  内藤恵子

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