メディカルトピックス
MEDICAL TOPICS
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No.70 がん治療、免疫細胞の攻撃力高める タカラバイオなど進化する免疫療法
2024/11/12 2:00日本経済新聞 電子版(改変)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG18AA40Y4A011C2000000/
体の免疫機能でがんを治療する免疫療法が進化している。免疫細胞を遺伝子改変し、がんへの攻撃力を高める治療法が米国で8月に希少がん向けに承認を受けた。日本でもタカラバイオなどが実用化を目指す。これまで治療が困難だったがんを治す免疫療法の最前線に迫る。(中略)希少がんの一種で腕や脚の筋肉などにできる「滑膜肉腫」の患者8人にタカラバイオの開発した薬剤を投与した。患者は従来の薬物治療などでは進行や再発を抑えられなかったが、投与後に半数でがんが縮小した。
この薬剤は「TCR-T細胞」と呼ばれる。免疫細胞の一種のT細胞を強化して治療に使う。患者からT細胞を取り出して遺伝子を改変し、がん細胞の目印となるたんぱく質に反応するアンテナのような分子「T細胞受容体(TCR)」を持たせて体内に戻す。
タカラバイオは25年度中に承認申請を目指す。この薬剤が目印とする分子は肺がんや食道がんなどの一部でも生じるため応用できる。
がん細胞は正常な細胞の遺伝子が(複数)変異してできる。細胞表面にあるたんぱく質も正常細胞と似ていることが多く、免疫細胞には見分けがつきにくく攻撃しづらい。がんの目印を(T細胞)免疫細胞に「教え」て、攻撃しやすくする。
免疫療法の登場までがんの治療法は主に3種類だった。手術による外科治療、抗がん剤などの薬物療法、放射線療法だ。2010年代、画期的な効果をもつがん免疫薬「オプジーボ」(免疫細胞機能促進剤)などが登場し4つ目の治療法として確立した。
海外ではTCR-Tの実用化が24年に始まった。8月、創薬スタートアップの英アダプティミューン・セラピューティクスの開発品が滑膜肉腫向けに米食品医薬品局(FDA)の承認を初めて受けた。同社による44人対象の治験では患者の4割でがんが縮小し、5%ではがんが無くなった。(中略)
免疫細胞を強化する治療法の中では「CAR-T細胞療法」(キメラ抗原受容体, CAR)が先行する。TCR-Tとはアンテナを構成する分子構造が違うが、がんの目印に反応して攻撃するのは同じだ。米国では17年、日本でも19年に承認された。これまでに承認されたのは全て(特定の)血液がん向けで、全がんの約9割を占める固形がん向けの実用化はまだだ。がんの(適切な)目印が見つからなかったり、免疫細胞が(不足して)がんに十分集まらなかったりするためだ。この壁を乗り越える研究も進む。(中略)
肺や胃など、患者数の多い固形がん向けにも技術開発が進む。免疫細胞療法の課題はコストだ。例えば、CAR-T細胞療法は1回で約3千万円かかる。患者以外の細胞からCAR-Tを作って量産するなど、治療費抑制を狙う研究も活発だ。(中略)
治療効果を高めるには、がんの目印によく反応するアンテナの構造を見つけるのも重要だ。ただ、有望な構造の発見まで10年かかる例もある。24年のノーベル化学賞のテーマになった人工知能(AI)によるたんぱく質の構造予測技術が役立つ。
たんぱく質同士の相互作用を高精度に予測できれば、有望な構造の候補をAIで選別でき、素早い開発につながる。阪大の保仙教授は「糖鎖の変化などでできる複雑な目印も狙いやすくなる」とみる。AI活用が免疫療法の進化を後押ししそうだ。
以上、免疫細胞によるがん治療の進化についての記事を改変して掲載いたしました。
福岡メディカルクリニック(瀬田クリニックグループ)では自身の免疫細胞のT細胞を採取して増加させる、がんの目印を検査で確認し、樹状細胞を使ってT細胞に知らせて攻撃させるという治療(樹状細胞ワクチン療法)を行っています。自身の細胞で行う為、体の状態にも影響されます。多数の経験と治療実績を積み重ねて、更なる治療技術の改良も行っています。「今、何ができるか」ご相談を希望される方はお問合わせください。
2024年11月24日 福岡メディカルクリニック 内藤恵子