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No.77 免疫化学療法に抵抗性の食道癌における免疫細胞療法の臨床評価(症例報告)

No.77 免疫化学療法に抵抗性の食道癌における免疫細胞療法の臨床評価(症例報告)

2025/08/08 ニュースリリース 瀬田クリニックグループ           https://www.j-immunother.com/research (改変)
医療法人社団滉志会瀬田クリニック東京では、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)および標準治療が無効であった食道がんに対して活性化Tリンパ球療法(アルファ・ベータT(以下、αβT)細胞療法)を行い、病状が改善した症例についてまとめた症例報告論文(*1)が、学術誌『Anticancer Research』に掲載されましたのでお知らせいたします。
現在、我々は、ICIに無効となったがん患者さんを対象に、αβT細胞療法の安全性および有効性の検討を行っています。本報告では、化学放射線療法、化学療法、ICI(ニボルマブ)による治療後、効果が得られなかった食道がんの患者さんに対し、ニボルマブ終了後3か月でαβT細胞療法を開始した症例を紹介しています。
[今回の報告内容]
背景:➢ ICIが無効と判断された患者に対する治療法は限られている。➢ 先行研究では、ICIの効果を高めることを目的に、αβT細胞療法との併用療法における安全性試験を実施し、特記すべき免疫関連の有害事象(irAE)は認められなかった(UMIN: 000028756)(*2)。➢ ICIおよび抗癌剤治療が無効であった腎孟がんに対してαβT細胞療法を実施し、病状の改善が認められた症例を報告している(癌と化学療法、第52巻第5号2025年5月)。この症例ではICIが無効と判断された後も一定濃度の薬剤が血中に残存していた可能性があり、αβT細胞療法との併用療法と同様の効果が得られた可能性がある。
症例概要:60歳代女性、食道がん。化学放射線療法、化学療法、ニボルマブによる治療を受けたが効果は得られず、肝転移が進行した。標準治療終了後に当院を紹介され、ニボルマブの最終投与から約3か月後にαβT細胞療法を6回実施したところ、CT検査にて肝転移の軽度な縮小を確認した。
評価:➢ 特記すべき免疫関連の有害事象(irAE)は認められなかった。➢ フローサイトメトリーでCD3⁺、CD4⁺、CD8⁺、αβT細胞、γδT細胞の増加を確認した。
考察:➢ ICIが血中に残存していたことにより、免疫細胞療法とICIの機能的併用効果の可能性が考えられた。➢ ICIが無効であった要因の一つとして、エフェクターT細胞の不足が考えられた。➢ αβT細胞療法によるT細胞の増加がICIの効果を引き出すことに寄与した可能性がある。
本症例では有害事象は認められず、治療後に肝転移の縮小、T細胞(CD3⁺、CD4⁺、CD8⁺など)の増加、腫瘍関連抗原DDX53に対する自己抗体の上昇が確認されました。ICI投与後も一定濃度の薬剤が血中に残存していたと考えられ、ICIと免疫細胞療法の併用効果が得られた可能性があります。ICIが無効と判断された場合でも、免疫細胞療法の併用により治療効果が期待できる可能性があります。
現在、瀬田クリニックグループでは、ICI治療後の患者さんを対象に、免疫細胞療法(αβT細胞療法)の忍容性(安全性)および有効性を確認する臨床研究(*3)を実施しています。

瀬田クリニックグループは今後も、臨床現場で得た最新の知見や研究結果等を速やかに治療に応用するとともに、研究成果に係る情報発信を継続することで、がん免疫細胞治療の発展に貢献してまいります。

(*1)Clinical Evaluation of Immune Cell Therapy in Esophageal Cancer Resistant to Immunochemotherapy . Anticancer Research August 2025, 45 (8) 3553-3559; DOI: https://doi.org/10.21873/anticanres.17716
(*2)免疫細胞療法と免疫チェックポイント阻害薬併用の安全性に関する探索的臨床研究(UMIN000028756)
(*3)免疫チェックポイント阻害薬不応例に対するαβT細胞療法の忍容性を見る試験(jRCTc030220287)

以上。本来ICIはキラーTリンパ球が十分に存在して効果を発揮するものであるため、免疫細胞療法との併用が望ましいとは考えられる。ICIの副作用の増強を避ける為に積極的な併用には慎重に対応してきた経緯があります。この臨床研究は、一定の条件の方には福岡メディカルクリニックでもエントリーをお受けすることが可能です。気になる方はご相談ください。
2025年8月10日      福岡メディカルクリニック  内藤恵子

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