メディカルトピックス
MEDICAL TOPICS
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No.16 がん免疫療法とは ~ネオアンチゲン樹状細胞ワクチンなど~(質問集)
今回は最新トピックスではなく、皆様からよくいただく質問にお答えしたいと思います。
質問1;がん免疫細胞治療って何ですか?
人間(生物)の外敵や自身(個体)に不要なもの(異物)に対して、体内から排除する機能で、本来身体に備わっており、また、生命活動の中で新たに獲得していけるものです。人間の体の中には免疫反応を起こすために、3段階、2種類のシステムを持っています。
第一段階は異常な物質(がん)を検知し、分解解析し、免疫システムを稼働させることです。この段階で働く代表的な担当細胞は樹状細胞(ジュジョウサイボウ/白血球の一種)で、貪食細胞と言われる細胞の仲間です。貪食とは物質を取り込み、食べて分解してくれる細胞です。貪食された物質は酵素などで分解され、蛋白質の最小単位アミノ酸集団まで分解されます。この細胞機能を強化したものが樹状細胞ワクチン療法となります。
そして、第2段階として、このアミノ酸集団は各個人(個体)のラベル(目印)であるHLA(ヒト白血球抗原)毎に特有の複合体として、あるリンパ球細胞(白血球の一つ/分化、増殖前の前駆細胞)に伝達されます。その後この前駆細胞は条件により、爆発的に増えます。この状態を人工培養で強化したものが活性化リンパ球療法です。
第3段階はこのがん細胞に特化して反応する成熟Tリンパ球(キラーTリンパ球)はがん細胞を記憶しているので、体内で探して、駆逐するための攻撃を行います。正常細胞を攻撃することはありません。
とても優秀なシステムです。このシステムが本来遺伝子として身体に備わっていることを利用したがん治療法です。
また、これ以外にも第2段階の別の方法としてBリンパ球というがん複合体(がん抗原)に対して抗体を産生するシステムもあります。ただし、がん複合体に対して有効な抗体ができて治療に使われるシステムはあまり報告されていません。これはがん抗原が正常細胞と非常に似ているため、反応しにくいと考えます。例えばウイルスでも抗体ができるものとできないものがあります。
更に特殊なリンパ球系細胞としてNK(ナチュラルキラー)細胞があります。この、細胞は自身のラベルであるHLAとは無関係に細胞をやっつける性質を持っています。そうすると異常細胞であれ、自身にとって正常で必要な細胞であれ、やっつけてしまうのかとということになります。しかし、ここも、ちゃんと暴走しないように、自身のHLA分子が出ている細胞には反応しないように設定されています。瀬田クリニックグループの300例以上のがん組織を調べた研究では90%近くのがん細胞はHLAを発現している事を確認しています(Anticancer Research;36(7):3715-3724)。NK細胞による治療はキラーTリンパ球による治療より有効である可能性がやや低いとなります。
但し、がんに対する免疫細胞のネットワークシステムは、未だ解明の余地のあり、単純ではありません。各々の細胞が複合的に連携し働くバランス、タイミングも重要だと考えます。
質問2;がん免疫細胞療法とがん標準治療と何が違うのでしょうか?
がん細胞は発症と言われた段階(画像検査で確定)で通常100万個以上の細胞の集団と考えます。このがん細胞集団を直接、局所的に除去・対処しようとするのが外科療法や放射線治療です。全身的治療として代表的なのが抗がん剤(殺細胞剤)となります。殺細胞というのは細胞が増殖生存していく中での細胞機能に直接ダメージを起こし、がんを破壊する薬剤で、一般的には数種類を合わせて投与します。この薬剤は正常細胞とがん細胞を見分けることなくダメージを与えます。がん細胞が正常細胞よりダメージが多くて再増殖しなくなると成功です。正常細胞のダメージ(副作用)があります。
近年では抗がん剤として分子標的薬が多く開発されています。これはがん細胞と正常細胞のわずかな違いである遺伝子変異や蛋白質異常を目標にダメージを与える薬剤で前述の殺細胞抗がん剤よりピンポイントでがん細胞を攻撃できると思います。課題は、がん細胞のすべての異常が明らかになっているわけでないということです。今、がん遺伝子検査(選択的遺伝子、パネル検査)などが保険適応で調べられるようになってきました。治療対象となる遺伝子が見つかり、有効な分子標的薬が見つかる確率は徐々に増えてくると考えます。
最新のがん標準治療として「がん免疫治療薬」である免疫チェックポイント阻害剤があります。免疫細胞を使うのではなく、がん免疫細胞システムがより有効に機能するように、がん免疫システム内で起こっている抑制反応(ブレーキ)を緩和する薬剤です。京都大学 本庶教授が発見され、ノーベル賞を受賞された研究です。人間のがんに対する免疫細胞反応を増強する薬剤です。現在も新規薬剤が研究され、また、前述の種々の抗がん剤と同時に使用する研究が世界中で行われています。
今やがん治療においてがん免疫システムは常識となっているといえます。しかし、殺細胞抗がん剤は免疫細胞含む正常細胞にダメージを与えますので、現行の標準治療において注意が必要と考えます。
保険適応されているがん標準治療とは別に、がん免疫細胞システムを強化するがん免疫細胞療法が必要と考えます。現在、多くの診療現場でリンパ球や樹状細胞の状態を調べることはありません。
がん標準治療にがん免疫治療薬が加わったことで今まで以上にがん治療の効果が上がってきています。今後はがん免疫細胞機能をいかに増強させるかが一つの課題と考えられています。
質問3;何故、がん免疫細胞治療が保険適応とならないのでしょうか?
誰もが受けたい治療であるのに、保険適応でないので病院で受けれないという話を聞きます。理論的にはぜひ受けて頂きたいと思います。しかし、一人ひとり、血液をいただき、高度管理設備施設で個別に専用の培養器材を使用して作るリンパ球培液や樹状細胞ワクチン療法は一般病院では対応できません。大学病院の研究やごく一部の先進医療で特例として行われていますが、希望者全員にとは不可能だと考えます。
皆様に確実に治療を提供することは技術・経験・実績が必要で、画一的に大量生産ができるようにならないといけません。日本で保険適応になる為には、万人が等しく享受できるという条件に合致する事が公的保険の原則で、現状では無理と考えます。
さて、如何でしょうか?少しご理解いただけましたでしょうか?通常1~2時間ぐらいかけてご説明する内容なので分かりにくいいかもしれません。ホームページを参考にされて下さい。
免疫細胞治療を受けるために、遠方(海外含む)よりも問い合わせがあります。治療を受けられる方にはご相談の段階から、効率的に治療を受けて頂くための情報交換をさせていただいております。また、一部のがん保険では免疫細胞治療や各種検査を適応できる場合もありますもで、お問い合わせください。タイミングは重要です。
究極の個別化精密医療(パーソナライズド・プレシジョンメディシン)の免疫細胞治療である「ネオアンチゲン樹状細胞ワクチン」(メディカルトピックスNo13)も、効率よく準備できるようにご相談を電話、LINEでも受け付けております。是非お問い合わせをください。
がんと診断受けたら、また、がん?が気になるなら、いつでも。
2020年6月14日 福岡メディカルクリニック 内藤恵子