メディカルトピックス
MEDICAL TOPICS
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No.28 がん「第5の治療法 光免疫療法」世界初の研究所 関西医大、22年に
日本経済新聞 2021年4月12日
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF095JL0Z00C21A4000000/
関西医科大学(大阪府枚方市)は2022年4月に、「第5のがん治療法」として期待を集める「光免疫療法」で世界初の研究所を設立する。開発者で所長に就任する米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆主任研究員は12日、現在対象の顔や首のがんに加え「乳がんなどへの適用も検討する」と話した。様々ながんの患者に新たな選択肢を提供する。
光免疫療法はまず、がん細胞と結びつく薬剤を患者へ投与する。薬剤ががんの近くに集まった後に、近赤外線のレーザー光を当ててピンポイントで破壊する。
NIHの小林主任研究員が発明し、楽天グループの楽天メディカル(米カリフォルニア州)の前身企業が特許のライセンスを取得して開発を進めた。(中略)手術、放射線、抗がん剤、免疫薬に続く「第5のがん治療法」と呼ばれる。楽天メディカルが実施した米国での臨床試験(治験)では、従来の治療で効果がなかった頭頸(とうけい)部がんの患者30人のうち、43%にあたる13人でがんが消えたり縮んだりした。
20年9月に楽天メディカル子会社が、世界に先駆けて日本で製造販売の承認を取得。現在は日本だけで治療に使え、3月中旬時点で国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)や愛知県がんセンター病院(名古屋市)など、全国の約20の病院が導入している。関西医大が新設する光免疫医学研究所は「光免疫療法」や「免疫」などの3部門に分かれ、約30人が在籍する予定だ。現在は外からレーザーを当てやすい頭頸部がんに限られている。(中略)小林氏は「まず乳がんや食道がん、子宮頸(けい)がんが対象として有望。将来的にはがん患者の8割に役に立てるようにしたい」と話す。(中略)
光免疫療法の治療薬の価格は患者の体の大きさにより異なるが、平均すると1回投与当たり約400万円で、最大4回まで使える。国の医療保険などで患者負担は1回最大で約30万円だ。楽天メディカルは光免疫療法と免疫薬を併用する治験を、米国で頭頸部がんと皮膚がんを対象に進めている。国立がん研究センター東病院も食道がんで光免疫療法の医師主導の治験を進めているほか、胃がんでも計画中だ。(以上)
さて、No.20で話題にした光免疫療法の専門研究機関が作られるという喜ばしいニュースです。昨年10月に「光免疫療法」で使う新薬「アキャルックス点滴静注」の製造販売が条件付き早期承認されたばかりですが、期待が大きい所以と考えます。EGFR抗体(セツキシマブ)、その仲間のHER2抗体(ハーセプチン)?が対象の様です。これらの抗体にはADCC効果という免疫細胞による抗体機能の増強反応が見られます。また、この治療による局所のがん細胞の破壊ががん抗原を増やし、がん免疫サイクルという、がんに対する免疫システムを惹起され、転移部位にも期待できると他所で説明されています。日本先発の治療に期待します。
2021年4月12日 福岡メディカルクリニック 内藤恵子