メディカルトピックス
MEDICAL TOPICS
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No.38 膵臓がん、微小物質て早期発見 東京医大発新興など
2021年11月25日 日経産業新聞 より
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF272D2027102021000000/
早期発見が難しいがんの代表例が膵臓(すいぞう)がんだ。血液検査などでがんを早期に見つけられれば生存率の向上につながる。細胞が放出する「エクソソーム」や「マイクロRNA(リボ核酸)」と呼ぶ微小物質を手掛かりに、膵臓がんを見つける技術の開発が進む。人を対象にした検査や実証も始まっている。
東京医科大学発のスタートアップ、テオリアサイエンス(東京・千代田)は2021年7月、膵臓がんやその発症リスクを見つけるための検査を、医療機関と提携して始めた。調べるのは膵臓がん細胞が血液中に分泌するエクソソームに含まれる2種類のたんぱく質だ。500マイクロ(マイクロは100万分の1)リットルというわずかな量の血液から調べる。(中略)
240人以上の膵臓がん患者と100人以上の健康な人を調べたデータをもとに検査開始に踏み切った。陽性と判定された人が膵臓がんを患う「陽性的中率」は60~83%。従来法である血液中の「CA19-9」と呼ぶ目印たんぱく質を調べる検査の20~50%より高い。膵炎を膵臓がんと誤認する「偽陽性率」も2~5%と、従来の4~43%より低い。
落谷教授(同社最高責任者/東京医大教授)は「ステージ1~2の早期がんを見つけるのに役立つ」と話す。現在は検査で膵臓がんの可能性が高いと判明したら、画像診断も受けてもらい、病気を確定している。
国立がん研究センターが11月10日に発表した集計結果によると、05~08年にがんと診断された人の10年後の生存率は様々な部位のがん全体で58.9%だった。前立腺がん(99.2%)や乳がん(87.5%)、甲状腺がん(86.8%)などが高い一方で、膵臓がん(6.6%)や肝がん(17.6%)、胆のう・胆管がん(19.8%)は低い。
落谷教授らは140人以上の大腸がんの患者でも精度を検証中だ。「大腸がんや胃がんなど計7種類のがんで、自由診療の検査を始める準備をしている」(中略)
東芝はがん患者で増えているマイクロRNAを、専用チップで検出する手法を開発した。血液から、膵臓がんや乳がんなど13種類のがんの有無を判定する。患者と健康な人を、99%の精度で見分けられるという。東レも血液中を流れる約2600種類のマイクロRNAを解析するチップを開発した。国立がん研究センターと日本対がん協会が、乳がん検診のマンモグラフィー(乳房エックス線撮影)で精密検査が必要になった約300人を対象に20年から臨床試験を進めている。乳がんを見つける性能を確かめるのが目的だ。膵臓がんなどへの応用も見込む。(中略)
大阪大学の谷口正輝教授は血液中のマイクロRNAが化学変化を起こした割合を1分子ずつ読み解く技術を開発した。阪大の石井秀始特任教授らが、この技術を使ってステージ1~2の膵臓がん患者や同3~4の約80人の進行がん患者などを調べたところ、80%以上の精度で健康な人と見分けることができた。「ステージ0~1の膵臓がんを見つければ、患者の予後(病気の進行具合や治療の効果)がよくなり、生存期間も伸びる」と石井特任教授は話す。
こうした血液検査をもとにした診断法が確立・普及すれば、膵臓がんの早期発見・早期治療につながる。(草塩拓郎)
以上
当院では今までもマイクロRNAによるがんの早期診断検査を行って参りました。多くは同時に高精能超音波診断器による画像診断も併用しており、より精密検査必要な方には高度医療専門機関に紹介を行います。ただ、(超)早期ということで、いわゆる診断が確定しない症例が多いかとは思います。しかし、これらの症例は、さらに年単位で医療機関で経過を見る必要があります。お酒をよく飲む方、糖尿病を持っている方、血糖コントロールが難しくなった方などはより注意深く検査をするべきと考えます。
2021年12月27日 福岡メディカルクリニック 内藤恵子