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No.(49-)50 「がんワクチン」研究加速 かかった人も治療に可能性(2)

No.(49-)50 「がんワクチン」研究加速 かかった人も治療に可能性(2)

(No.49 「がんワクチン」研究加速 かかった人も治療に可能性(1)より続く)

承認されたがん治療ワクチンはある? その仕組みは?

2010年、米食品医薬品局(FDA)は、進行性前立腺がん用に「シプリューセル-T」というがん治療ワクチンを初めて承認した(編注:日本未承認)。このワクチンの標的は「前立腺酸性ホスファターゼ」という抗原で、正常な前立腺細胞にもあるが、がん細胞にはより多く存在する。2010年7月に医学誌「The New England Journal of Medicine」に発表された治験結果によると、シプリューセル-Tを投与された患者は、腫瘍の大きさに変化はなかったものの、投与されなかった患者よりも中央値の値では約4カ月長く生きた。

がん細胞そのものではなく、B型肝炎やHPVなどのウイルス用に承認されたワクチンも、将来的に肝臓がん、子宮頸がん、頭部がん、頸部がんを発症させうるウイルス感染を防止するので、がんワクチンとみなされる。(中略)

実用化が近いがんワクチンは?

現在、多数のがんワクチンの治験が進行中だ。他の免疫療法と併用する場合が多く、皮膚がん、乳がん、膀胱がん、前立腺がん、すい臓がんなど、さまざまながんが対象になっている。

2022年12月13日、米ワクチンメーカーのモデルナ社は、同社で開発中のmRNAワクチンの治験結果を発表した。この治験は、ステージ3または4のメラノーマ(悪性黒色腫、皮膚がんの一種)患者に対して実施された。このワクチンと、がん細胞に対する免疫反応を強化する米メルク社の治療薬「キイトルーダ」を併用した患者群では、キイトルーダを単独で使用した患者群と比較して、皮膚がんの再発または死亡が44%少なかった。このワクチンは、個々の患者に合わせて作られた個別化mRNAワクチンであり、34のネオアンチゲン*に対してT細胞の反応を引き起こすよう免疫系に指示する。モデルナ社とメルク社は、ワクチンの安全性と有効性を確認するため、2023年にはさらに大規模な第3相治験を実施する予定だ。(中略)

次の重要なステップは、なぜワクチンによく反応する人とそうでない人がいるのかや、ワクチンの効果はどれほど長く続くのかを見極める研究だ。(中略)

今後の課題は?

技術が進歩し、がんワクチンの開発と治験が進む一方で、米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターの腫瘍内科医クリストファー・クレバノフ氏のように懐疑的な見方をする研究者もいる。がんワクチンは、臨床的に有意な水準まで腫瘍の縮小をもたらす効果をもちうるのだろうか。より高度にがん細胞を認識できるよう患者のT細胞を改変する「キメラ抗原受容体T細胞療法」(CAR-T細胞療法)などの方が、もっと有効な治療法になるのではないか。クレバノフ氏はこのような疑問を抱いている。氏の研究グループは後者のアプローチを用いているが、氏は現在進行中のワクチン治験で明らかにされるデータに注目したいと考えている。

ショーエンバーガー氏によれば、治療用ワクチンの治験は、進行がんの患者が対象となることが多い。しかし、こうした患者は、手術で腫瘍を摘出し、化学療法や放射線治療も経験しているので、免疫系がかなり疲弊している。こうした末期段階ではワクチンが十分に効果を発揮できない可能性もあるため、がんワクチンが最も有効な患者や症状を特定する必要があると氏は話している。がんワクチンはまだ治験と改良の初期段階にある、と米カリフォルニア大学サンフランシスコ校のがん免疫学者リサ・バターフィールド氏はくぎを刺す。予防用ワクチンと治療用ワクチンはいずれも、なすべき研究が山積している。

文=PRIYANKA RUNWAL/訳=稲永浩子(ナショナル ジオグラフィック日本版サイトで2022年12月30日公開)

 

如何でしたでしょうか。がん免疫細胞治療での新しい知見や問題点が記載されている記事です。また、原文中に掲載されているTリンパ球細胞とがん細胞の電子顕微鏡写真を是非見ていただきたいと思います。私たちの体の中で起こっている現象です。個人の免疫状態はそれぞれ様々で、治療に必要な質と量の細胞を十分確保する事など、まだまだ課題がありますが、日々進歩しています。

2023年1月18日         福岡メディカルクリニック  内藤恵子

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