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No.66 血中循環腫瘍DNA(ctDNA)は消化器がんの臨床判断の指針となるか?

No.66 血中循環腫瘍DNA(ctDNA)は消化器がんの臨床判断の指針となるか?

2024/07/10 Jennie Smith / Medscape 2024/6/26より引用

https://www.medscape.com/s/viewarticle/should-ctdna-guide-clinical-decisions-gastrointestinal-2024a1000bvo

血中循環腫瘍DNA(ctDNA)、つまり腫瘍から放出されて血中で検出されるDNAは、消化器がんにおいて治療反応や再発の可能性をリアルタイムで評価可能な予後予測ツールとして、研究者の期待が高まっている。使用するアッセイや分析の種類に応じて、ctDNAはがんの遺伝子変異に関する豊富な情報を提供することができる。ctDNAアッセイは、1次スクリーニング、腫瘍量の追跡、あるいは、がん手術後の微小残存病変(MRD)の検出に使用できる。

しかし、臨床判断を導くうえでのctDNAの役割は、まだ定義されていない。米国・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2024)で、オーストラリアの研究者らは、ctDNA陰性化を活用して、生存転帰に影響を与えることなく、StageII大腸がん術後患者の不要な化学療法を回避させることが可能であったという研究結果を発表した。同研究グループはまた、ctDNA陽性が早期膵臓がん術後患者の再発の重要な予測因子であることを示す探索的研究結果も発表した。しかし同研究者らは、ctDNAの状態に基づいて、これらの患者の術後補助化学療法の継続期間に関する治療決定を下すべきではないと結論付けている。

DYNAMIC試験の結果

オーストラリア・Peter MacCallum Cancer Centre(メルボルン)のJeanne Tie氏は、ASCOにおいて無作為化比較試験「DYNAMIC試験」の5年生存率の結果を発表した。本試験の2年時の知見から、大腸がんStageII患者が術後補助化学療法を行うべきか否かを分類するうえで、ctDNAが有用であることがすでに示されていた。これらの患者の80%は治癒切除が可能であるため、化学療法を必要とする少数派の患者を特定することが重要だとTie氏は話している。(中略)さらに研究者らは、ctDNA陽性の術後患者の多くが、術後補助化学療法によりctDNA陰性化を達成したことも明らかにした。また、ctDNA陰性化を達成した患者は、達成しなかった患者と比較して5年無再発率が著しく良好であった。(中略)

DYNAMIC-Pancreas試験の結果

Peter MacCallum Cancer CentreのBelinda Lee氏が、DYNAMIC-Pancreas試験の結果を報告した。本試験は、早期膵臓がん患者102例を対象に、術後中央値5週時にctDNA検査を実施した。ctDNA陽性患者は医師選択に基づく6ヵ月間の術後補助化学療法(FOLFIRINOXまたはgemcitabine/capecitabine)を受けた。一方、術後のctDNA陰性患者は、医師の判断により化学療法を段階的に減らし、3ヵ月間にすることができた。

Lee氏らは、追跡期間中央値3年時における無再発生存期間の中央値が、術後のctDNA陽性患者では13ヵ月であったのに対し、ctDNA陰性患者では22ヵ月であったことを明らかにした。これは、ctDNA陽性が他の要因とは無関係に早期再発の予後因子であることを示している。しかし、ctDNA陰性患者でも再発リスクが高かったため、ctDNA陰性に基づいて化学療法期間を短縮することを推奨されなかったと、Lee氏は語っている。

米国・Fred Hutch Cancer Center(ワシントン州シアトル)のStacey Cohen氏は、StageII大腸がん患者において、これらの結果がさらに検証されるまで、臨床診療ガイドラインが変更されることはないだろうと、インタビューで述べた。(中略)この分野は急速に進歩しており、「いまは化学療法における患者の選択を改善する素晴らしい時期だ」と同氏は続けた。医師が化学療法レジメンを選択できるようにしたことは、実臨床を反映したものである。

「本試験は、特定の治療法ではなく戦略を検証するようデザインされていることを考慮すると、とくにそのことが当てはまる」とTie氏はインタビューで語った。また、「ctDNA陽性患者を治療するうえで、より効果的なのはどの化学療法かという問題に具体的に対処するには、さらなる研究が必要になるだろう」とも述べた。(以下省略)

以上、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)についての研究発表で、大腸がん、膵がん術後患者における術後化学療法の判断の一基準となるもしれないという報告でした。この検査については種々の検査方法があり、統一基準がありませんが、様々な研究や臨床ですでに利用されています。さらなる詳細な研究結果が必要ですが、治療戦略画策の一つとして有用と考えます。

当院が行う再発予防としての免疫細胞療法においても一指標になると考えています。がんを構成する細胞は一人ひとり、特徴が異なります。それぞれ、詳細な検査に基づいて、精密な医療(プレシジョンメディシン)ができることが望ましいと考えます。、今後の研究成果に期待したと思います。

2024年 7月14日 福岡メディカルクリニック   内藤恵子

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