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MEDICAL TOPICS

No.81 今、問われる細胞治療の今後-1

今、問われる細胞治療の今後-1

2025年12月16日 瀬田クリニック東京 院長ブログ 

https://www.j-immunother.com/blog/137staff/

免疫細胞治療26年の歩みと現状

瀬田クリニック東京は1999年3月に開院してから、26年が経ちました。この四半世紀の間にがん治療、免疫療法、免疫細胞治療は大きく進歩し、環境も様変わりしました。開院当時は、がん免疫細胞治療を専門とする医療機関は他には存在せず、当院はその先駆けとして治療体制を整えてきました。その後、少しずつ免疫細胞治療を提供する医療機関が増加し、2014年に「再生医療等安全性確保法」が施行されました。現在、この法制下で免疫細胞治療を届け出ている医療機関は、日本で500以上にのぼります。これらはほとんどすべて自由診療です。「どこでも免疫細胞治療が身近で受けられるようになった」という良い面もありますが、一方で、果たしてこれだけの数の医療機関が免疫細胞治療を提供する必要があるのか、という疑問も抱かざるを得ません。どう考えても不自然と言わざるを得ない状況です。

再生医療における深刻な事故報告

昨年末に厚労省から「再生医療等の提供によるものと疑われる敗血症(菌名:Pseudoxanthomonas mexicana)のため、集中治療を要する入院症例が2名発生した」ことのpress releaseがありました。
他の報道機関からの発表も含めると、細胞加工施設で細菌が混入したことが敗血症発症の原因と考えられます。それには、細菌の混入を防止するための管理が不十分であったうえに、事前に提出した再生医療の提供計画を守っていなかった、といった複数の違反が確認されたということです。人に投与する細胞を加工、治療することは高度な技術が必要であることのみならず、極めて慎重な取り扱いが必要です。細胞は医薬品のように滅菌することができません。したがって、細菌の混入には細心の注意が必要であることはいうまでもありません。また、培養工程での混入を防ぐだけではなく、細菌が含まれる細胞を患者さんへ投与することを防ぐシステムが必要です。

重症患者に特有のリスクと当院の対策

重症ながん患者さんでは感染症を合併していることもあり、感染部位から血中に細菌が出てしまう「菌血症」という疾患を併発していることもあります。そのような場合は、採血した段階で血液にもともと細菌が混入していることになり、培養の工程で細菌を増殖させてしまう可能性があります。しかし、当院ではこのような細菌の混入は必ず発見され、細菌で汚染された細胞が投与されることは決してありません。

当院の厳重な品質管理と25年以上の実績

瀬田クリニックは1999年以来、メディネット社と共同開発で細胞培養システムを構築して参りましたが、患者さんへ細胞が点滴されるまでに「最低3回」の細菌検査を行う体制を確立しています。混入があるにもかかわらず、それが見落とされ、誤って患者さんへ投与されることはまったく考えられません。当院では開院以来、24,500名以上の患者さんへ約210,000回の治療を行ってきましたが、このような細菌の混入による事故はもちろん、その他の医療事故もゼロです。

本来必要とされる医師の条件

そもそも、がん免疫細胞治療は高度な専門性を必要とする治療です。そのため治療を担当する医師には、少なくとも次の3つの条件が求められます。

  1. がん治療の専門性

がんの診断・治療経験がない医師が、がん治療の1つである免疫細胞治療を適切に行うことは不可能です。たとえば、美容外科医や循環器の専門医ががん治療に携わることは基本的にありません。

  1. 免疫学への十分な理解

少なくともがん免疫応答を十分に理解し、できれば常に最新の論文などで継続的に知識をアップデートしている必要があります。最近では患者さん自身もウエブなどから様々ながん免疫療法の情報を集めていますが、中には誤った理解をされる方もいらっしゃいます。そのような患者さんと議論し、正確なアドバイスをする必要があります。

  1. 細胞培養・細胞治療の深い知識

理想的には、治療に用いる細胞を実際に自らで培養した経験があるのがベストです。

しかし、現実にはこれら3つの条件をどれも完璧に備えている医師は多くないと思います。いずれの条件もまったく満たしていない医師が、現在、大勢参入してきているという現状です。昨年の医療事故は細胞培養、細胞治療の知識が多少でもあれば、起こりえません。

免疫細胞治療に今後求められる安全性の議論

本年5月31日には、改正された再生医療等安全性確保法が施行されました。どのようにこの治療の安全性を確保して、発展させるかを考える時期に来ています。今年の8月には厚生労働省より、細胞治療による死亡例の報告がありました。これは免疫細胞ではなく、幹細胞の治療によるものです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_62642.html
免疫細胞治療では生じることのない事例と思われますが、細胞治療全体としての問題点を整理し、安全性を確保しながら発展させるための議論が不可欠です。次回、これらの問題点を整理して、ご報告したいと思います。

 

以上、今回は少し趣旨を変えて当瀬田クリニックグループの責任者である後藤理事長のブログを転載しています。私共は早くから免疫細胞療法を必要とする人たちに正しく提供できるように研鑽を続けてきました。日本では多くの医療機関が書類届出だけで施行可能となっているのが現状です。治療数が増えるにあたりトラブルも出現してきています。また、それぞれの治療内容が非常に理解しづらいことも治療希望者の正しい選択を不可能にしているように思います。今後、第2、3弾と継続して発表されるとのことなので、併せてご確認いただきたいと思います。

2025年12月30日   福岡メディカルクリニック  内藤 恵子

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