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MEDICAL TOPICS

No.5 ~がん免疫細胞治療の今~

~がん免疫細胞治療の今~

 がん細胞を攻撃するがん免疫機構が本来体に備わっていると言うことは、オポジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤により証明されたと思います。がん細胞免疫治療は,1999年東京世田谷市瀬田の瀬田クリニックからスタートして今年で20年になります。細胞培養技術は進化してきました。しかし、治療の理論は当初より変わりません。

①リンパ球治療;がん患者さんの血液からがん細胞を攻撃するキラーTリンパ球を採取し、体外で増幅させ体に戻し、総合的な攻撃力を高める。

②樹状細胞ワクチン治療;がん特異的なキラーTリンパ球の増殖の基となるリンパ球前駆細胞を、体内で効率よく作るために活性化樹状細胞を作成する。

そして今、がん免疫細胞治療において研究されていることは、

1.如何にキラーTリンパ球の攻撃目標を正確に設定できるか。

2.如何に大量で効果的なキラーTリンパ球を短期間で作成するか。

 

次のようなニュースが2019年7月19日ミクスOnlineより配信されました。

「iPS細胞由来のCAR-T細胞療法を開発へ 京大iPS研と創製」(武田薬品)

武田薬品は7月16日、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)との共同研究により創製したiPS細胞由来のCAR-T細胞療法(iCART)の研究成果を承継し、がんを対象に開発を始めると発表した。臨床開発に向け準備を進め、2021年の first-in-human (FIH)試験実現を目指す。CiRAで作製した「再生医療用iPS細胞ストック」をもとにクローン化したiPS細胞を用い、患者に提供可能なiCARTを共同研究。非臨床試験では、細胞表面に発現しているCD19を標的とするiCARTが強い抗腫瘍効果を発揮することを明らかしたという。患者自身から細胞を採取するのとは異なり、1種類のiPS細胞マスターセルバンクから均一な細胞製剤を大量生産する製法を開発する。それにより、現行のCAR-T療法よりも低価格で患者に提供できるようにしたい考え。(抜粋)

解説しますと、山中先生がiPS細胞(多能幹細胞)研究をされている京都大学iPS細胞研究所(CiRA)が今年3月に保険承認されたB細胞リンパ腫に対する細胞治療薬キムリアと同様な細胞製剤をiPS細胞で作成することに成功したということです。

Bリンパ細胞は本来CD19という腫瘍マーカーとなる目印を持っています。患者のTリンパ球を、CD19に反応するように遺伝子操作をして人工的なサイボーグのキラーTリンパ球(キムリア)を作成投与することで、的確にBリンパ腫細胞を攻撃できるという画期的な細胞治療薬のことです。

では、もう一つ少し前のニュースです。

「 100万円でマイiPS 」

2018年12月21日、山中先生が文部科学省で考えを述べられました。

患者本人の細胞から作る人工多能性幹細胞(iPS細胞)を数年後低価格で提供したい述べた。山中氏はこの細胞を「マイiPS 」と呼び、数千万かかっている費用を100万円程度に押さえることを目標に掲げた。(抜粋)

 iPS細胞 は正常細胞に山中因子というものを使って遺伝子変化を起こさせ、種々の細胞に分化できる多分化能細胞にするという素晴らしい細胞です。が、新しい臓器・細胞が必要な患者さんから細胞を採取し、目的のものを作るには、安全性までを考えるとかなりの労力と時間がかかります。そこで、治療に必要なiPS由来細胞を第3者の血液や臍帯血から、HLAという白血球の血液型にパターン分類し、備蓄して研究に利用されています。輸血同様、HLA型を合わせると、第3者の細胞でも拒絶反応をおこしにくいですが、HLAは非常に多くの組合せからなり、骨髄移植でHLAをすべてマッチさせることが相当困難であることを考えると、拒絶反応覚悟であり、免疫抑制剤併用が必要になります。これでは折角、新しく臓器・細胞を提供される人の負担が大きくなります。

以上を考えると、自身の細胞で自分のがんに反応する細胞を増幅させ、安全に投与するということが、理想的であることは間違いないと考えます。後は効率の問題です。如何にキラーTリンパ球の攻撃目標を正確に設定し、如何に大量に効果的にキラーTリンパ球を短期間に作成するか。この課題について、瀬田グループの研究は続けてられています。

がんの目印を(がん抗原)を一人ずつ調べて、治療を行うはもとより、血液や組織からがん細胞を取り出して、遺伝子・蛋白の異常を同定し、今まで以上に患者さん毎に特異的な樹状細胞ワクチン作成に向けて研究を続けています(ネオアンチゲン、個別精密医療)。

大量培養もまだまだ改善の余地があります。これが可能になると、免疫細胞治療を今よりも経済的負担が少なく、多くの患者さんの提供できるようになるでしょう。がん治療を目指す人々の考えは一緒です。

がん予防医学の領域では遺伝子レベルでのがん早期検知、先制医療が可能になりつつあります。がん治療においても、遺伝子・蛋白のレベルで、個別の有効な分子標的薬の探索、治療設計がされるようになると考えます。分子標的薬と免疫細胞治療の組合せは、体の負担が少なく有効性が高い治療と考えます。

このように効率よくがんを征圧し、身体に負担なく継続可能で、誰でも受けられるがん治療ができる日はそう遠くないと思っています。日々進化するがん治療、今すぐに、は無理でも、もうすぐできる治療の可能性があります。できるところから、一緒に考えていきたいと思います。是非ご相談いただきたいと思います。

 

福岡メディカルクリニック  内藤恵子

 

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