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No. 88 膵臓がん治療に道 増殖防ぐ新薬候補、電場や超音波も活用

No. 88 膵臓がん治療に道 増殖防ぐ新薬候補、電場や超音波も活用

2026年6月13日 日本経済新聞 サイエンス

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG0153R0R00C26A6000000/

【要約】膵臓(すいぞう)がんの治療に光が見えてきた。がんを増殖させるたんぱく質を狙った新薬候補が画期的な治療効果を出し、注目を集めている。電場や超音波を使う新しい治療法の開発も進む。「難攻不落」とされる膵臓がんの治療が急速に進歩する可能性が出ている。新薬候補の「ダラクソンラシブ」は米国臨床腫瘍学会(ASCO)で注目を集めた(米シカゴ)

生存期間が2倍に

5月末、米シカゴで開かれた世界最大のがん学会、米国臨床腫瘍学会(ASCO)の全体会議は約1万8000人の聴衆の拍手に包まれた。米新興のレボリューション・メディシンズが新薬候補「ダラクソンラシブ」の最終段階の臨床試験(治験)結果を発表した。治験の対象は膵臓がんの治療後に他の部位へ転移した500人の患者だ。一般的な抗がん剤を投与したグループは全生存期間(OS)の平均が6.7カ月だったのに対し、ダラクソンラシブを服用した人々は13.2カ月に達した。がんが増殖しない無増悪生存期間(PFS)も7.2カ月と従来の約2倍だった。治験結果は医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)」に掲載された。

膵臓がんは初期の症状がほとんどなく、発見が難しい。腹腔(ふくくう)の奥にある膵臓にでき、重要な血管が取り囲むために手術も困難だ。また線維芽細胞とコラーゲンでできた「腫瘍間質」という壁に守られ、抗がん剤や免疫細胞が届きにくい。短期間で増殖したり周辺の組織へ転移したりする。(中略)

難攻不落の標的

膵臓がんはおよそ9割の患者で「KRAS」という遺伝子変異があり、KRASから作られる「RAS」というたんぱく質ががん細胞の増殖に重要な役割を果たすことが分かっていた。40年以上前から研究者や製薬会社がRASの働きを阻害する薬の開発を目指したが、ほとんどが失敗した。ダラクソンラシブはRASの働きを幅広く阻害した。ASCOで講演した米ダナ・ファーバーがん研究所のブライアン・ウォルピン医師は「RASを標的とする原理を実証した」と説明する。この薬剤はRASを直接狙わずに、細胞内の「シクロフィリンA」というたんぱく質に結合する。この結合体が(スイッチ)オン状態のRASにくっつき3者の複合体を形成し、がん細胞の増殖を指示する情報の伝達を妨げる。

がん細胞の盛んな増殖に伴い、RAS遺伝子には様々な変異が入る。今回の方法を使えば多くの変異を一度に阻害できる。日本膵臓学会理事長の正宗淳氏は「RASを狙う従来のアプローチとは全く異なる発想で開発された薬剤で、画期的なイノベーションだ」と話す。(中略)ただしダラクソンラシブで膵臓がんが完治するわけではないので注意が必要だ。正宗教授は「他の抗がん剤と同様にがん細胞が耐性を獲得する可能性もある」と指摘する。そのうえで「今後は他の抗がん剤や免疫療法との併用療法を注視していく必要がある」と話す。

電場や超音波使う手法も

薬剤以外の開発も進む。注目技術の1つが腫瘍治療電場(TTフィールド)療法だ。特定の周波数の電場を利用し、がんの増殖を抑える。スイスの医療機器ノボキュアが開発し、日本や欧米で脳腫瘍などの治療として承認された。膵臓がんでも既存の抗がん剤と併用して患者のOSを有意に延長させる結果が出た。

超音波で膵臓がんの細胞を焼く「HIFU(高密度焦点式超音波療法)」という治療法の開発も進む。ソニア・セラピューティクスは3月から米国で治験を始めた。間質に覆われた膵臓がんを焼き切って治療する。

様々な新薬や治療技術を使えば、体から膵臓がんの兆候が消失する「寛解」の状態まで患者を導ける可能性がある。ダラクソンラシブの開発はその突破口になるかもしれない。

がんは日本人で最多の死因だ。世界保健機関(WHO)は世界のがん患者が50年に22年比で77%増えて3500万人になると予測する。

膵臓がんなどの治療が難しいがんを早期に見つけて治療する技術が進歩すれば、人々の寿命を延ばせる。製薬会社や研究機関の取り組みを政府が支援するなどして研究を加速する必要がある。(高田倫志)

以上、学会ニュースを改変報告いたしました。すい臓がんを筆頭にKRAS遺伝子変異をきたすがんは少なくないので、とても期待したいと思います。当院でも膵がん症例で他のKRAS変異標的薬、また、脳腫瘍例で腫瘍治療電場療法と当院の免疫細胞治療の併用事例も経験をしており、有効性を実感しています。腫瘍の治療は単純ではなく総合的な治療がより期待できる効果をきたすと考えます。気になる方はご相談ください。

2026年6月28日       福岡メディカルクリニック 内藤恵子

 

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