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No.36 コロナだけでないmRNAワクチン 進行がんも止めた(3)

No.36 コロナだけでないmRNAワクチン 進行がんも止めた(3)

NATIONAL GEOGRAPHIC 日本版     2021/8/6

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO74172280W1A720C2000000?channel=DF130120166020&k=2999123123590

大腸がんには効きにくかった?

mRNAワクチンによるがん治療には大きな期待が寄せられているが、「研究はまだ初期段階にあり、新型コロナワクチンのように、すぐに成功するというわけにはいかないでしょう」とセーダー氏は言う。(中略)両者の開発期間に差がある理由の1つは、その目的の違いにある。新型コロナワクチンは予防を目的としていて、コロナウイルスの特徴的なスパイクたんぱく質を免疫系にあらかじめ見せておくことで、実際にウイルスに遭遇したときに撃退できるようにするものだ。これに対して、mRNAがんワクチンは治療薬であり、すでに体内にある腫瘍細胞を探し出して破壊するように免疫系を教育する。新型コロナ感染症でもわかるように、治療薬の開発ペースは基本的に予防ワクチンより遅い。

(中略)研究者たちはmRNAがんワクチンを「免疫チェックポイント阻害薬(がん細胞がT細胞にかけるブレーキを解除し、腫瘍を認識して攻撃できるようにする)」や「養子免疫療法(患者の血液や腫瘍からT細胞を採取し、実験室で増殖させてから患者の体内に戻し、体が腫瘍細胞を認識して破壊するのを助ける)」など、他の免疫療法と組み合わせることができるかどうか検討している。

現時点では、mRNAがんワクチンの人間での治験に関する発表はほとんどないが、かすかな光が見え始めている。バウマン氏らは、頭頸部がんまたは大腸がんに対してmRNAがんワクチンと免疫チェックポイント阻害薬を併用する治療法の第1相治験で、注目すべき差を見いだした。頭頸部がん患者10人のうち5人は併用療法によって腫瘍が縮小し、2人の患者では治療後にがんが検出されなくなった。一方、大腸がんの患者17人は、併用療法に反応しなかった。

「大腸がんでは免疫系の活動があまり見られず、がん細胞は上手に隠れています」とバウマン氏は説明する。「一部の症例では、がんがどのような姿をしているのかを免疫系に教えるだけでは不十分なのかもしれません」。T細胞は、がんに到達し、除去する必要がある。大腸がん患者では、それが起こらなかったのだ。

いずれは予防ワクチンまで

しかし動物実験では有望な結果が得られている。18年1月に学術誌「Molecular Therapy」に掲載された論文では、進行が速く、転移しやすく、予後が悪いことで知られる「トリプルネガティブ乳がん(治療の標的となる3つの受容体が欠如している乳がん)」に対する効果を高めるために、モノクローナル抗体という合成抗体とmRNAワクチンを組み合わせて投与する治療法の評価が行われた。その結果、併用療法を受けたマウスは、ワクチンかモノクローナル抗体の単独投与を受けたマウスに比べて、腫瘍への免疫反応が有意に強まったことが明らかになった。(中略)

専門家の中には、今後5年以内にmRNAがんワクチンが米食品医薬品局(FDA)から承認される可能性があると言う人もいる。「免疫系の能力を高めてがんなどの外敵を正確に排除できるようになれば、その日はすばらしい日になるでしょう」とバウマン氏は期待している。

(文 STACEY COLINO、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年7月12日付]

 No.34~36までで大作になりましたが、如何でしたでしょうか?

福岡メディカルクリニックでは福岡大学との協力で大腸がんにおいて抗がん剤治療とキラーT細胞(養子免疫細胞療法)のコンビネーションで良好な治療成績を報告させていただいてております。(メディカルトピックス No.18 養子αβT細胞療法を伴う化学免疫療法は転移性大腸がん(mCRC)に有用)

がん免疫サイクルの中でのがん認識を行うがんワクチン(mRNAワクチン、樹状細胞ワクチン)と、実際にがんを攻撃するキラーT細胞の質や量が重要と考えます。個別にがんの目印を教えるにも、がん細胞の遺伝子検査を行い、異常遺伝子配列から派生するmRNA、さらに最終形態としてのペプチド(ネオアンチゲン)を同定し、ネオアンチゲン樹状細胞ワクチンの治療も現在行っております。

患者さんにより治療法の選択肢は複数あると考えます。治療のタイミングも皆さん異なります。”すばらしい日”が待ち遠しいです。

2021年10月24日  福岡メディカルクリニック 内藤恵子

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