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No.39 化学免疫細胞療法でがん治療は新たなステージへ

化学免疫細胞療法でがん治療は新たなステージへ

(2022年1月31日 福岡の頼れるお医者さん 2022より)

近年、がんの3大療法(抗がん剤、放射線、手術)に免疫細胞療法を併用することで、治療の相乗効果が期待されることがわかってきました。転移性大腸がん(ステージ4)の治療で確認されたその効果について2人のドクターに詳しい話を聞いてみました。

自らのリンバ球を再生し免疫を高めてがんを攻撃する

福岡大学病院消化器外科と福岡メディカルクリニックが協力。ステージ4の大腸がん患者の抗癌剤一次治療に免疫細胞療法を併用する治療を行ない、68.8%に効果(CR[完全奏効]及びPR[部分奏効])を認め、疾病制御率(CR~SD[不変]の割合)は87.5%に及ぶことが確認された。その結果は論文で発表され、国内外から注目を集めている。

*ANTICANCER RESERCH 40:4763-4771(2020);Changes   in Immunological Status in Patients With Metastatic Colorectal Cancer Treated With Firest-line Chemoimmunotherapy

Q:この治療ではどのような免疫細胞療法が用いられたのでしょうか?

内藤先生(以下内藤) 今回は抗がん剤治療中の患者さんから採血してリンパ球を取り出し、そのリンパ球を培養、増幅、再生して体内に戻し、免疫細胞(キラーTリンパ球)によるがんへの攻撃を追加する「aβ(アルファ・ペータ)T細胞療法」を行ないました。抗がんによって傷つけられたがん細胞を、免疫を活性化して攻撃するという「がん免疫サイクル」によって標準治療の効果も高まり、大きな成果が得られたと考えられます。

Q:半数以上の人で部分奏効の効果が確認でき、しかもステージ4から完全奏効に至った方がいたことに驚きました。大腸がん治療を専門とする吉田先生はこの結果をどうご覧になっていますか?

吉田先生(以下吉田) 大腸がんの治療効果は3ヵ月ごとにCTを撮って画像で評価しますが、免疫療法を併用した患者さんも同様の評価を行ない、効果がでた方の多くが6ヵ月で縮小効果を確認できました。CR(完全奏効)は画像上で完全に腫瘍がなくなっていることを意味し、PR(部分奏効)はがんの長径が30%以上小さくなることなので、実際にはがんのボリュームが半分以下程度になっていることになります。今回の研究では対象となる患者数は決して多くはありませんでしたが、これまで大腸がんの患者さんで化は現実的にはごくわずかであったことを考えると、よい結果であるといえるでしょう。

内藤 吉田先生は抗がん剤の副作用への対処を研究されていて、同様な治療を受けている患者さんと比べると、吉田先生のところから来られる患者さんは副作用が少ないように見えます。患者さんの生活の質が維持できれば、それは免疫療法にとっても有益なことなんです。

吉田 がん治療にはガイドラインがありますが、患者さんの状態は人によって大きく異なり、現実的にはその通りに治療ができるわけではありません。時間の経過とともにがんは進行するので、身体条件が悪化する中でも治療を継続できるよう、サポーティブケアには十分配慮しています。

Q:これまでの成果を元に新たな研究もスタートしたそうですが、その概要とねらいについてお聞かせください

吉田 今は順天堂大学下部消化管外科と日本医科大学消化器外科と福岡大学の共同研究で、ステージ3以下の大腸がんで手術適応の患者さんを対象として、抗がん剤と免疫療法を併用する臨床試験を行なっています。現在の治療では、手術できれいにがんを切除できても、血液中に残ったがん細胞からの再発を防ぐのは難しいです。そこで、手術前にリンパ球を増やして、免疫の力で再発をできの研究の目的です。研究に同意して治療を受けた患者さんは、—年間は再発なく過ごしておられますが、今後も引き続き観察を続け、その成果を確認していくことになります。

Q:がん治療は年々進化していることはわかりましたが、大学病院で標準治療を受けながら、免疫細胞療法を受けることは可能なのでしょうか?

吉田 今は患者さんがご自身で自分の治療の可能性を広げるため、保険外診療も視野に入れてインターネットで調べておられます。「こういう治療法があるので試してみたいです」と相談を受けた際は、その時に行なっている化学療法との併用が問題ないと判断できれば患者さんの意思を尊重してクリニックを紹介しています。

内藤 今はがん治療でセカンドオピニオンを求めることも一般的になっていますので、当院にも相談に来られます。抗がん剤もこの10年ほどで大変進化していますし、免疫細胞療法もそうです。ただ、免疫細胞療法は大量生産できる薬剤による治療とは異なる究極の個別化医療。保険診療ではありませんが、治療効果を上げたい方には、可能性を広げる選択肢になると思います。これまでの研究から、身体の状態がいい患者さんは免疫療法の効果がでやすいことがわかっています。治療開始のタイミングは重要と考えます。(以上)

「福岡の頼れるお医者さん 2022 P16-17」より転載及び編集いたしました。今までメディカルトピックスの中でも取り上げてきた論文ですが、この度、機会があり、対談という形で掲載させていただいた次第です。2012年から臨床データを集めこの論文のきっかけになっています。“誰もが”ではないかもしれませんが、がん治療の選択肢の一つとして知っていただきたいと祈る想いです。質問、なんでもご相談ください。

 

2022年2月1日      福岡メディカルクリニック   内藤恵子

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