メディカルトピックス
MEDICAL TOPICS
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No. 87 悪性胸膜中皮腫に対する新規核酸医薬 MIRX002 の安全性を確認―マイクロ RNA がん治療薬で世界初、新しい治療法の可能性―
令和8年6月 4 日NEWS RELEASE 広島大学記者説明会 (要約)
https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/97819
【概要】 広島大学大学院医系科学研究科・細胞分子生物学研究室の田原栄俊教授(研究代表者)および原爆放射線医科学研究所・呼吸器外科の岡田守人教授(治験調整医師)ら の研究グループは、株式会社 PURMX Therapeutics(本社:広島市、田原栄俊)と共同で、アスベスト曝露との関連が強く示唆されている希少がん「悪性胸膜中皮腫」を対象に、新規核酸医薬 MIRX002 の臨床試験を実施してきました。 MIRX002 はヒトに存在する天然型マイクロ RNA「miR-3140-3p」を有効成分とする核酸医薬です。がん細胞で不足している「miR-3140-3p」を補充する「マイクロ RNA の補充療法」による単回投与試験(MIRX002-01 試験)および 反復投与試験(MIRX002-02 試験)が終了し、いずれの試験においても「副作用が 軽く安全に投与可能である」という主要な目的を達成しました。治験期間(初回投薬日から最終観察日まで)は、2022 年 1 月 12 日から 2025 年 9 月 16 日までであり、広島大学病院、近畿大学病院、兵庫医科大学病院の3施設で実施しました。MIRX002 は薬剤を病変近傍に直接届ける胸腔内 (局所)投与を採用することで全身曝露を最小化する戦略をとっており、本試験 において、マイクロ RNA がん治療薬として世界で初めて臨床における忍容可能な安全性プロファイルを実証しました。
【背景】 悪性胸膜中皮腫は、胸腔内面を覆う中皮細胞に発生する稀な悪性腫瘍であり、アスベスト(石綿)曝露との関連が強く示唆されています。本邦における罹患患者数は、2030 年頃をピークに年間約 3,000 人 に達すると予測されています。免疫チェックポイント阻害薬の導入により治療パラダイムが大きく変化しつつあるものの、診断された時点で進行していることが多く、治療選択肢が限られていることから、新しい仕組みでがんの増殖を抑える治療法の開発 が強く求められています。「miR-3140-3p」は、細胞老化に伴い発現が上昇するマイクロ RNA の中から「がん幹細胞」および「薬剤耐性がん細胞」の双方に対して抗腫瘍効果を示す有望な核酸医薬候補として同定されたマイクロ RNA であり、悪性胸膜中皮腫の組織および細胞株において、miR-3140-3p の発現量が低下していることが確認されています。 MIRX002は不足しているmiR-3140-3pを補う「マイクロ RNA の補充療法」で、悪性胸膜中皮腫細胞に細胞死を誘導しがんの進行を抑えることを目指した薬です。また、悪性胸膜中皮腫患者の胸腔内に直接投与することで、薬をがんの近くに届け、全身への副作用を抑えられる可能性があります。
【今後の展開】 今回得られたデータを踏まえ、株式会社 PURMX Therapeutics 社は、海外を含む次段階の臨床試験(グローバル P1/2 試験)に向けた準備を進めています。2024年には Pre-IND 相談においてアメリカ食品医薬品局(FDA)から科学的助言を受けて おり、国際的な治験体制の構築も開始しています。今後は、より多くの患者さんを対象とした試験を通じて、実際の治療として使える ように開発を加速してまいります。
資料;マイクロ RNA(miRNA):定義: マイクロ RNA は、ヒトの体内で作られる約 22 塩基長の小さな RNA 分子であり、約 2,600 種類が機能的なマイクロ RNA として知られています。これらは非コードRNAの一種であり、メッセンジャーRNAと異なり直接タンパク質を合成することはありません。機能: マイクロRNA は、特定のメッセンジャーRNA(mRNA)に結合し、その翻訳を抑制することで、遺伝子の発現を調節します。1つのマイクロ RNAは、100以上の異なる遺伝子の発現を調整することができ、これにより細胞の機能や発生過程において重要な役割を果たします。
資料;核酸医薬: 核酸医薬とは、生体内で合成される核酸(DNA や RNA)を構成している ヌクレオチドおよびその誘導体を基本骨格とする薬剤の総称です。
以上、いつにもまして難解だったかも知れませんが、新しい治療の開発が示唆されました。このマイクロRNAを研究されている田原先生は少し前までミルテルという会社でマイクロRNAによる早期がん診断検査を早くから展開されており、当院でもその検査を高く評価しておりました。ただ、万人に対する検査としては精度管理が難しい為、検査は中止されました。その時の研究を含めて今回の研究発表につながったと考えています。臨床応用までは時間がもう少しかかりそうですが、期待したいと思います。
2026年6月7日 福岡メディカルクリニック 内藤恵子