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No.17 キラーT細胞の機能 新型コロナウイルスに対するT細胞記憶

No.17 キラーT細胞の機能~
新型コロナウイルスに対するT細胞記憶(Nature オンライン掲載論文)

https://aasj.jp/news/watch/13531

今回はがんのトピックスではなく、皆さんの関心高いコロナウイルスとキラーT細胞についてのトピックスです。

「人間はもともと活性の高い抗体を作れるように生まれついているのだろう。」(中略)
「ウイルス感染に対する免疫反応は、抗体反応だけではない。ウイルス(遺伝子)がコード(作成)するタンパク質に対するT細胞反応が重要な鍵を握っている。」(中略)
「多くのウイルスで、感染細胞を標的にするキラー細胞(CD8リンパ球)がウイルス防御に重要な働きをすることが知られ、このようなウイルス特異的キラーT細胞を誘導できるワクチン開発が進められている。」(中略)「ウイルス抗原(ウイルスのタンパク質から切り出される短いペプチド)を認識するためには、このペプチドが組織適合性抗原(MHC)と一緒に細胞の表面で提示されないと、T細胞は反応できない。そして最大の問題はこのMHCの組み合わせが個人個人で大きく違っており、T細胞がウイルスペプチドを認識する確率は、どのMHCを持っているかで大きく変化することが知られている。」(中略)

「シンガポール・デューク大学からの論文は、異なるコロナウイルス感染によりT細胞免疫が成立する可能性について調べた研究「SARS-CoV-2-specific Tcell immunity in cases of COVID-19 and SARS, and uninfected controls
(Covid-19感染者、SARS感染者、および非感染者のSARS-CoV-2に対するT細胞免疫)」だ。(中略)
「結果は以下のようにまとめることができる。新型コロナウイルスに感染した後回復した人達は、全員ウイルスの構造タンパク質NP1およびNP2由来ペプチドに対してT細胞免疫が成立しており、CD4,CD8両方の反応が見られた。以前SARSに感染した人で調べると、低いレベルではあるがやはり新型コロナウイルスNP1, NP2に対する反応を見ることができる。そして、このとき反応するT細胞は、試験管内でもう一度刺激しなおすと、100倍近い反応を示す。すなわち、刺激に反応して増殖し、さらに強い反応を示す記憶が成立している。」(省略)

これは、キラーT(CD8リンパ球)細胞は、コロナウイルス(外来性異物)に対しても、がん細胞(遺伝子異常をきたした自己の細胞)に対しても、免疫機能による攻撃を発揮できるということです。コロナウイルス感染症は免疫抗体反応が起こりにくく、また、抗体産生しても2-3か月で抗体が減少すると報告されています。しかし、抗体による免疫(液性免疫)と別に、細胞性免疫というキラーTリンパ球による精密な細胞免疫機能が成立しており、さらに、再感染に対しても反応できる記憶機能を持っているということです。
人間の身体は驚くほど精巧に作られており、これらの機能を研究し治療に発展させるということが、医療者に与えられた課題であると日々痛感しております。

2020年7月25日  福岡メディカルクリニック 内藤恵子

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