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MEDICAL TOPICS

No.46 線虫による膵がん検査で知っておくべきこと

線虫による膵がん検査で知っておくべきこと(要約)

2021年12月18日 m3.com臨床ダイジェスト ドクター寄稿  片山和宏先生

線虫を利用したがん検査「N-NOSE」*で、膵がんの早期発見を可能にしたという報告が注目を集めています(「すい臓がんステージ1発見可能に、HIROTSUの線虫利用技術で」の記事を参照)。興味深い報告ですが、実際 に利用する上で注意すべき点もあります。

膵がん早期診断の試みは、多くの方面から実施されており、N-NOSEはその一つですが、現状と理解しておくべき点について、いくつかコメントを加えたいと思います。

*膵がん含む15種のがんを包括的検出、がんの種類は特定しない。

膵がんの早期発見戦略

高リスク群の設定とその精密スクリーニングが有用

全体の5年生存率が10%未満である膵がんを腫瘍径20mm以下のステージ1の場合で5年生存率約50%、さらに早期で腫瘍径10mm以下だと80%程度まで改善することが指摘されています。ステージ1より早期での診断が一つの基準になるかと思われます。

膵がん早期発見のための有用な戦略は、①高リスク群を設定し、②それらを精密にスクリーニングする―という2段階戦法です。膵がん罹患率は、国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」で、人口10万当たり33.5人、約3000人に1人の割合です。

高リスク群は、家族性膵がんと遺伝性膵がんです。膵がん全体に占める割合は前者で5-10%程度、後者で3-5%程度です。遺伝性以外のリスク因子としては、肥満、喫煙、糖尿病、慢性膵炎、IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)など指摘されています。中でもIPMNについては高リスク群としてスクリーニング体制を整えることが提案されています。糖尿病も特に新規発症例については膵がんのリスクを考慮すべきことが指摘されています。ただし上記の危険因子を考慮しても、早期発見されている膵がんは一部分というのが現状です。そこで血液検査など、簡単かつ有用なバイオマーカーを開発しようとする試みが多くなされています。

腫瘍細胞由来の核酸検出の研究が進んでいる

腫瘍マーカーであるCA19-9は、膵がん診断の有力な候補の一つですが、早期診断には不十分とされています。比較的研究が進んでいるのは、腫瘍細胞から放出されるcell-free DNAや microRNAなどがあります。DNAの検出により、早期の膵がんを感度94.8%、特異度91.6%で診断できたという報告もされています。核酸検出については、唾液や尿からの検討も実施されています。また膵臓は体内の代謝に関与しています。血中アミノ酸組成の変化がいくつかのがん腫で変化することに注目し、「膵がんアミノインデックス」という形で商品化されています。「N-NOSE」は、尿中のにおい物質に線虫が反応することを利用したものですから、大きく分類すると、 このバイオマーカー検出法になると考えられます。

バイオマーカー検査の課題

一般集団で検査すると真の陽性は1%未満

バイオマーカーにより、高リスク群を抽出する方法を検診で使用する際には、注意すべき点が2つあります。1つ目は発表されている線虫検査の膵がん検出の感度は100%、特異度は91.3%とされています。3000人中の1人の膵がん症例は正しく陽性と判定されますが、疑陽性が存在します。早期の膵がん診断の精密検査である内視鏡超音波検査(EUS)、内視鏡的逆行性膵管造影(ERCP)というある程度侵襲性のある検査ですので、検査対象はかぎられます。現状ではバイオマーカーで陽性と判定された症例は、腹部超音波やMRI/CT検査を実施し、膵がん疑い症例を、EUSやERCPにつなげることになります。

偽陽性者が高リスク群であるかは不明

2点目は、偽?陽性と判定された症例が、膵がんを発症しやすい高リスク群なのかについては、現段階ではデータがないことです。バイオマーカーを検診に使用する場合、陽性と判定された方への対策を考慮した上で実施することが重要と思われます。検査を受ける方へ事前に説明しておかないと、不要な不安を与えることになります。また、現在の確率で陽性者を全て病院へ丸投げして、がんの精密検査を受けさせるのは、費用対効果的にはやや無駄があるように思います。年齢や他の検査結果を加味するなど、もう一工夫加えることが必要でしょう。 注釈;片山 和宏  市立貝塚病院総長

(寄稿原文ご希望の方はinfo@scg-fmc.comへお問合わせ下さい)

以上、片山先生の御寄稿は医療関係者へのものであり、判りやすく要約させていただきました。「N-NOSE」については、この寄稿以降、25万人の検査実態が少し分かるようになりました。状況に大きく変化はなく、PET-CT検査もがん発症の100%判定できません。当院へ戴く御相談に対する一つの説明となると考えます。自宅検査の簡便さの反面、検査陽性になった方々への医学的説明がない不安に対して、当院では複数の腫瘍マーカー検査+高性能超音波検査、核酸・アミノ酸バイオマーカー検査、遺伝素因検査を実施しております。疑陽性の方はフォローアップを行い、必要に応じて医療機関への誘導、もしくは先制医療の検討が可能です。まずご相談下さい。

2022年10月10日     福岡メディカルクリニック 内藤恵子

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