福岡メディカルクリニック

MENU
資料請求・問い合わせ
New お知らせ
New 説明会
New メディカルトピックス

メディカルトピックス

MEDICAL TOPICS

No.49(-50)「がんワクチン」研究加速 かかった人も治療に可能性(1)

No.49 「がんワクチン」研究加速 かかった人も治療に可能性(1)

ナショナルジオグラフィック 2023/1/18 日本経済新聞電子版より抜粋

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD108FK0Q3A110C2000000/

一般的に、ワクチンはあらかじめ病気から私たちを守るものだ。だが「がんワクチン」は、すでにがんにかかっている患者の治療に主に使われる。がんワクチンは長年研究され、幾度も失敗が繰り返されてきたが、最近は明るい兆しが見え始めている。

この10年間にゲノム解読などの技術革新が進んだことで、がん細胞とその遺伝子の変異をより詳しく調べられるようになった。その結果、標的がより明確なワクチンを設計できるようになっている。それと同時に、免疫系そのものや、免疫系ががんを認識し破壊する仕組みについても研究が進んでいると話すのは、米ラホヤ免疫研究所の細胞免疫学者スティーブン・ショーエンバーガー氏だ。(中略)開発の目標は、がん細胞を破壊するワクチンの実用化だ。一方で、リスクが高い人のがん発生を予防できるワクチンの試験も行われている。

がんワクチンとは?

あらゆるワクチンの目的は、体の安全を守るために、免疫系に標的について教え込むことにある。例えば、新型コロナウイルスワクチンは、ウイルスの情報を事前に免疫系に教える。そのおかげで免疫細胞は、侵入したウイルスをすぐに特定して破壊することができる。同じように、がんワクチンもがん細胞の「顔つき」を免疫細胞に教え込んで、免疫細胞ががん細胞を見つけて破壊できるようにさせる。この「教育」というプロセスが、サイトカインや抗体などを治療に活用したり、患者の免疫細胞の遺伝子を改変してがん細胞と闘わせたりする他の免疫療法と異なる点だ。専門家によれば、がんワクチンには、他の治療法で生き残ったがん細胞を破壊したり、腫瘍の成長や転移を防いだり、がんの再発を防止したりできる可能性がある。

がん治療用ワクチンの中には、免疫細胞の「樹状細胞」を利用するものもある。患者の血液サンプルから樹状細胞を取り出し、その患者のがん細胞から得た主要なタンパク質にさらして樹状細胞を教育するのだ。すると、患者の体内に戻された樹状細胞は、T細胞など他の免疫細胞に対し、がん細胞を見つけて破壊するように刺激したり教えたりすることが期待される。

T細胞は生物学的に最も驚くべきトリックをやってのける、と米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターの腫瘍内科医クリストファー・クレバノフ氏は解説する。T細胞には、腫瘍細胞の表面にあるタンパク質を認識し、結合する受容体がある。まるで鍵と鍵穴のような関係だ。いったん結合すると、T細胞は腫瘍細胞に穴を開けて破壊する。(中略)

がんワクチンの効果を強化するために、腫瘍に対する免疫の反応を促す医薬品と組み合わせて使用する研究もよく行われている。(中略)

がんワクチンはどう作られるのか

すべてのがん治療用ワクチンの鍵となるのは「腫瘍関連抗原」というタンパク質だ。これが健康な細胞よりもがん細胞の表面に大量に存在したり、異常や変異がある形で存在したりすると、免疫反応が引き起こされる。T細胞が腫瘍関連抗原を「発見」すると、細胞をがんと認識して破壊する。

がん生物学者たちは、健康な細胞とがん細胞のDNAやRNAの特異な違いを識別できるシークエンシング技術を活用して、こうした腫瘍抗原を特定する。ショーエンバーガー氏によれば、どの変異がT細胞の応答を引き起こし、ワクチンの適切な標的になり得るかを見極めることが重要だという。(中略)

がん細胞には過剰に存在するが、健康な細胞にも少量は存在する分子を標的とするワクチンの効果には限界があり、有効な免疫反応を引き出せない恐れがある。「これは大きな問題でした」と、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校のがん免疫学者リサ・バターフィールド氏は言う。免疫系が健康な細胞を攻撃する自己免疫という状態を引き起こす危険もあり、治療が困難な免疫異常につながることもある。そこで現在、がん細胞にしかない「ネオアンチゲン」(新抗原)という標的分子が注目され、研究が進められている。(No.50につづく)

文=PRIYANKA RUNWAL/訳=稲永浩子(ナショナル ジオグラフィック日本版サイトで2022年12月30日公開)

如何でしたでしょうか。がん免疫細胞治療での新しい知見や問題点が記載されている記事です。また、原文中に掲載されているTリンパ球細胞とがん細胞の電子顕微鏡写真を是非見ていただきたいと思います。私たちの体の中で起こっている現象です。個人の免疫状態はそれぞれ様々で、治療に必要な質と量の細胞を十分確保する事など、まだまだ課題がありますが、日々進歩しています。

 

2023年1月18日      福岡メディカルクリニック  内藤恵子

 

最近の投稿